ご挨拶

島根県立美術館館長 長谷川三郎

 島根県立美術館は松江市の宍道湖のほとり、小泉八雲も愛した美しい落日を望む場所にその斬新な造形を見せています。湖と空に融合するような建築設計は菊竹清訓(1928-2011)、彼の晩年の傑作のひとつです。同じ菊竹の設計による島根県立博物館(1959年)の財産を継承して、当館は1999年3月に開館しました。地方都市にありながら国内有数の美術館を目差して、広く県民に親しまれるとともに質の高い美術館活動の展開に努めて来ました。3年後には開館20周年を迎えますが、ミュージアムとしてはまだまだ基礎を培わなければならない若い美術館と言わねばなりません。
 たとえば一点の絵を前に深い感動を受けて立ち尽くす、そのような芸術的体験の場こそ美術館だけが持つ特質と言えましょう。そのためには、まず優れたコレクションの形成に力を注ぐ必要があります。同時に、企画展を含む充実した内容の魅力ある展示が求められます。そして収集と展示を来館者につなぐ普及教育活動も重要です。これらすべての美術館活動を支える日々の調査研究を通して、さまざまな知的財産も蓄積されていきます。
 形成されたコレクションと蓄積された知的財産は、県民にとって有用であるばかりではなく広くすべての人々にとって価値あるものとして、未来へと保存継承されなければなりません。こうして美術館は人間の精神活動の場であるとともにその所産を護り伝えるミュージアムの一つになることが出来るのではないでしょうか。
 博物館時代の収蔵品と開館以来の収集によって、コレクションは4,400点を超える規模に成長しています。日本近世絵画から19世紀フランス絵画や現代彫刻まで、「水」を主題とする絵画表現と島根の美術という大きな方針とともに、版画、写真、木を素材とする彫刻を柱として収集して来ました。中でも質の高い浮世絵版画と充実した写真部門は誇るに足るものと言えましょう。また毎年のコレクション企画展では、いつも新たな発見に気付かされます。あらためてコレクションの魅力に注目して頂ければ幸いです。残念ながら近年は厳しい財政事情から積極的な収集は望めませんが、寄贈者のご厚意を受けて活動を維持しています。
 多くの課題が思い浮かぶ当館の現状ですが、施設の管理と広報・来館者サービスを主な役割とする指定管理者〈SPSしまね〉との緊密な連携のもとに、すべての人々にとって親しみやすく、豊かな芸術的体験の場となることを願って活動を進めています。県民の皆様はもとより、美術を愛する多くの方々のさらなるご協力とご支援をお願い申し上げます。

2016年4月
島根県立美術館館長 長谷川三郎

沿革

1991年(平成3年) 1月 博物館整備検討委員による「博物館整備に関する提言」提出
1991年(平成3年) 11月 「文化施設整備基本方針」発表
1994年(平成6年) 2月 島根県立美術館基本構想制定
1994年(平成6年) 10月 島根県立美術館建設委員会設置
1994年(平成6年) 11月 設計競技参加10者を選定
1995年(平成7年) 4月 美術館建設室設置
(株)菊竹清訓建築設計事務所案を設計競技の最優秀作品に決定
1996年(平成8年) 10月 建設着工
1998年(平成10年) 6月 本体工事竣工
1999年(平成11年) 3月6日 開館

事業内容

事業内容

  1. 1. 展示公開

    幅広い視野で多彩な企画展を開催します。また主に収蔵作品によるコレクション展を行います。

  2. 2. 収集保存

    絵画、版画、写真、工芸、彫刻等、各分野の優れた作品を収集します。特に次の領域に重点をおいて収集を行います。

    1. (1) 水を画題とする絵画
    2. (2) 日本の版画
    3. (3) 国内外の写真
    4. (4) 木を素材とした彫刻
    5. (5) 島根の美術
  3. 3. 調査研究

    美術作品の学術的研究、ならびに作品の展示・保存や、教育普及などに関する専門的な調査研究を行います。

  4. 4. 教育普及

    展覧会に関連する講演会や創作講座のほか、美術図書の公開を行うなどさまざまな活動を行います。また自由な作品発表の場を提供します。

  5. 5. 美術情報の提供

    収蔵作品の情報や、県内外の展覧会情報などをデータベースに蓄積し公開します。

指定管理者制度について

当館は、2005年4月に指定管理者制度を導入しました。学芸部内は島根県の直営とし、広報や運営・管理部門を指定管理者に委託する業務分担方式をとっています。

期  間 2015年4月1日~2020年3月31日(5年間)
指定管理者 株式会社SPSしまね

施設概要

フロア構成 (単位:平方㍍)

展示部門 3,862 教育普及部門 547 サービス部門 2,114
企画展示室 1,153
展示室1(絵画) 737
展示室2(版画) 211
展示室3(工芸) 163
展示室4(写真) 360
展示室5(彫刻・小企画) 378
ギャラリー 860
ホール 252
アートスタジオ 104
講義室 82
アートライブラリー 109
エントランスロビー 1,310
中2階ロビー 242
2階ロビー 422
ミュージアムショップ 32
レストラン 99
ロッカールーム 9

建築概要

建築物名称
島根県立美術館
所在地
島根県松江市袖師町1-5
敷地面積
14746 平方㍍
建築面積
9311.92 平方㍍
延床面積
12498.88 平方㍍
階数
地上2階
最高高さ
15.5m
構造種別
鉄骨鉄筋コンクリート造一部鉄骨造
建築主
島根県
設計
株式会社菊竹清訓建築設計事務所

建築案内

島根県立美術館外観島根県立美術館外観島根県立美術館外観

建物

穏やかな波状のカーブを描く高い天井を持つロビー空間に足を踏み入れると、目の前に美しい湖の景観が広がります。風景と一体化したような優美な建物の形態は、水面と大地をつなぐ「なぎさ」をイメージしたものだといいます。
チタン製の大屋根は、日光を柔らかく反射します。対岸から見る時の視線を意識し、背後の山並みを遮らないように高さは低く抑えられています。屋根の円い開口部は展望テラスとなっています。
メインエントランスは冬の北西の季節風を避ける位置に設置され、ロビーから湖の景観を楽しみながら展示室へとアプローチができます。
設計者の菊竹清訓氏は多くの美術館・博物館建築を手掛けていますが、その中でも島根県立美術館は自然環境との見事な調和を見せる名建築と言えます。

設計者

菊竹清訓(1928~2011年)

福岡県に生まれる。1950(昭和25)年早稲田大学理工学部建築学科を卒業し、1953年、25歳で菊竹建築研究所を設立。ブリヂストンタイヤの創業者・石橋正二郎からの依頼で石橋文化センターの設計を行う。1958年、生活空間を自由に組み替える自宅「スカイハウス」を世に送る。1958年から“海上都市”を構想し、1960年代に新陳代謝する建築や都市を追究するメタボリズム論を提唱する。また、「か(構想)・かた(技術)・かたち(形態)」の設計理論を展開した。2000年のユーゴスラヴィア・ビエンナーレで「今世紀を創った世界建築家100人」の一人に選ばれる。

島根県立美術館 島根県立美術館

シンボルマーク

イメージ

  • ●水のイメージ
  • ●宍道湖のイメージ

  • ●島根(Shimane)のSの形状から
  • ●美術館の建物の形状から
製作者

田中一光(1930~2002年)

奈良市生まれ。1950年京都市立美術専門学校(現京都芸大)卒業。1960年日本デザインセンター創立に参加。1963年田中一光デザイン室主宰。日宣美会員賞、ワルシャワ国際ポスタービエンナーレ銀賞、毎日デザイン賞、芸術選奨文部大臣新人賞、ニューヨークADC金賞、東京ADC会員最高賞、毎日芸術賞、日本文化デザイン大賞、TDC会員金賞、朝日賞、第一回亀倉賞などを受賞。N.Y.及び東京ADC殿堂入り、紫綬褒章受賞、文化功労者表彰。